UX India 2012 参加報告2 (内容)
UX India 2012参加報告セミナー でご紹介したイベントの内容を本Blogでも掲載いたします。
Adobe: Jay Dutta 氏(LinkedInページ)
登壇したのは、Adobe India でXD(Experience Design)を統括する Jay氏です。Adobe社と言えば、Photoshop, Acrobat などのデジタルツールで知られており、最近のネット社会では欠くことのできない製品を提供しています。プレゼンの中で、Photoshopの画面を開発初期(1988年)と24年後の最新版(2012年)で比較して、製品の魂(どんな価値を提供しようとしているのか)を受け継ぎながら進化して行ったことを説明していました。更に、最近ホットな製品としてInstagramを取り上げ、「24年後にはどうなっているのか想像してみましょう!」と、聴衆に問いかけるシーンもありました。
Bosch: Pradeep Joseph氏(LinkedInページ)
User Experience Director の Predeep氏は、「デザインを並外れたものにする戦略的デザインリーダーシップ」と題してプレゼンがありました。
並外れることと平凡なことは、ほんのちょっとの差であり、どうやって抜きん出るかの考え方を2つの例をあげて説明されました。
【オリンピックで目立つシューズをデザイン】
野心を持つ: 公式スポンサーではなく、目標を高く設定する
機会を見つけだす: 地球上最大のイベント。幅広い人が参加&見る
人を集める: 献身的なチームを作る。オリンピックは最高の舞台
素早い: 全レンジの製品を'Volt'で[素早く]カバーする
細部に目が届く: 2年間の念入りな調査の結果。一番目につく色を選択
【Bosch社のUXへの取組み】
野心を持つ: 個々のチーム、部署にイノベーションとUXを持ち込む
機会を見つけだす: プロジェクト、トレーニングでUXを導入
人を集める: 多地域、多分野の混成チームを作る。多面的な人材確保
素早い: デザインイノベーションチーム(独、印、中、米)がリード
細部に目が届く: 品質保証、チェックツール、メンター。部門長がオーナー
Cognizant: Abhijit Thosar氏(LinkedInページ)
Cognizant社は、戦略的な情報通信システム構築のグローバル企業です。Abhijit氏は、Consumer Experience Strategist としての経験から「Data-driven Multi-screen Digital Experience」 とのタイトルでプレゼンされました。
「現実の顧客体験は、購入後に始まる」「Digital Businessは、複数の顧客から構成される」と提示した後、kotakと言う生命保険会社のウェブサイトのデザインを例にとって、どのように顧客体験を実現するか解説していました。トップページを見ると、そのサイトを訪れる人のニーズに合わせて、一目瞭然で関連サービスのページに遷移できるように工夫されています。
ミレニアルズ(デジタル技術とマスメディアによって、絶えず感覚を刺激されながら育ったミレニアムの若者たち)を意識することや、同一人物でも日曜日の夜と月曜日の朝では、やること・体験が違うことなど、状況に合わせる必要性も訴えていました。
モバイル対応の例としては、AVIVA と言う車の保険会社をあげ、ドライバーの運転の癖から、故障を未然に防ぐ提案を行うスマートフォンアプリが説明されていました。何か起きてからの対応をスムーズに行うとの発想から、車を快適に運転する体験をトータルで捕らえ、保険会社も保険加入者もハッピーになる「故障防止」に力を注いだわけです。
Hewlett-Packard: Uday M. Shankar氏(LinkedInページ)
Uday氏は、Yahoo!社, Nokia社と渡り歩いた後、Hewlett-Packard社に在籍しています。「インドのデザインはまだまだ発展段階である。1990年代よりはましだけど...」と述べた後、開発現場で起きているFE(Front Engineer)とEngineerの意識の違いに焦点をあてて、問題を指摘し始めました。Engineerは、要求された機能を実現して、バグが無いことを目指し、保守性・(開発の)効率性を重視する。しかし、FEはDesignerとEngineerの間に立って、プロトタイプを作り、デザイナーのアイデアを検証し、Engineerに伝える義務があると述べました。そして、FEが持つべくスキルとして、HTML, Flex, Silverlight, CSS, JQuery, Prototyping, Wireframingなどをあげていました。
IIT Bombay (Indian Institute of Technology, Bombay): Kirti Trivedi教授
Kirti教授は、「'Self-Evident' ness (自明であること)」をテーマにお話しされました。
「身の回りにある、椅子、ペン、やかん、ナイフ・フォークなどはすべて、自らがどのように使われるか自明である。」とのお話しから始まり、「それに比べて、世の中の電子機器は自明でなく、説明書を読んでもよく分からない場合もある。」と対比していました。特に、携帯電話はハード的なボタンやコネクターの配置などバラバラであることを指摘し、人間の認知特性(一度に覚えられる数字はせいぜい7桁など)を考慮して設計されるべきであると提言されていました。技術が発達する一方で、人間のことを置き去りにしないように、今一度、基本に立ち戻るべきなのかもしれません。