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人間中心デザインプログラム その2

2013年7月1日
インタラクションデザイナー 奈須

大分間が空いてしまいましたが...2012年度に受講した、人間中心デザインプログラムにおいて、私が興味を持った講義を簡単にご紹介したいと思います。
(この記事は、以前(5月13日)に書いた記事の続きになります)

今回の記事では、

について、各手法の概要と私が特に面白いと感じた側面についてご紹介します。

インプロビゼーション

1つ目はインプロビゼーションについて。
インプロビゼーションとは「即興劇、アドリブ」の事です。
インプロビゼーションの目的は、以下の3点があります。

  1. チームビルディング(アイスブレイクや共鳴)
  2. 発想トレーニング(発散/身体性)
  3. アクティングアウト支援(空間やタイミング共有の形成)

ここで、アイスブレイクとアクティングアウトについては馴染みのない言葉だと思いますので、簡単に説明します。1のアイスブレイクとは、グループワークなどを行う際、初対面者同士のの抵抗感や緊張を無くすことを意味します。
3のアクティングアウトとは、開発する製品やサービスを使用するシーンを寸劇的に演じる事で、製品利用の流れを確認したり、気付きを得たり、振り返りに生かすための手法です。
インプロビゼーションの講義で実際に行った内容は、
音楽に合わせて歩いたり、向かい合ってお互いが鏡に映った人として動く「人と鏡ごっこ」や、ボールがあるふりをしてパスをしていく「エアバスケット」、またインプロビゼーションを組み込んだ簡単なアクティングアウトのワークショップなどを行いました。
各インプロビゼーションのワークにおいて、何をするかは決まっているのですが、どのように行うかは決められておらず、「インプロビゼーション(即興劇)」の名の通り、全てアドリブで行いました。メンバーは2人1組、もしくは数人でチームを組んで行いました。
複数人で協力して行わなければ成り立たない、共同作業・同調・同意が要求されるものが主なので、どうすればお互いのサインが伝わるのか、考える必要がありました。
講義が進むにつれ、最初はぎこちなかった動きが徐々に大胆になったり、冗談をはさんでいったり...身体を動かすことで緊張がほぐれていき笑顔や自由な発言が増えていきました。インプロビゼーションによるアイスブレイクの効果を感じることができました。
実際、この講義後のワークショップでは、講義前のワークショップより自由に発言が出るようになっていました。自由な発言には、まずそれが自然であるような環境や雰囲気が大切だ、と改めて感じました。
また、アドリブの遊びの中で、ブレストのルール(批判しない・他人のアイデアに乗る、等 )を自然とカバーしており、そういった面から「発想トレーニング」としての効果も期待できます(前述の2つ目の目的)。

インプロビゼーションを行うことで、チームビルディングや、発想を自由にする効果を感じることができました。

インプロビゼーションについてのより詳しい内容は、上平先生のブログでご紹介されています。

KA法

2つ目はKA法について。
KA法とは価値ベースでユーザーの行動を読み解き、まとめていく手法です。紀文食品の浅田和実氏が食品の新商品開発のために開発なされた手法で、書籍にまとめられています。
この手法の目的は以下2点です。

KA法でユニークなのは、「価値」にフォーカスしている点です。ここでの「価値」とは、「ユーザーの行為に潜む価値」の事です。
ユーザーの行動の裏から、「どんなことに価値があるのか」という事に注目します。
KA法では、人の行動のどんな小さな所にも価値が潜んでいるという考え方の下、ユーザー行動を整理していきます。
KA法の手順は以下の3ステップから成ります。

  1. ユーザー調査から得られた情報をテキスト情報に整理する
  2. 「1」のテキスト情報から価値カードを作る
  3. 価値カードを整理、分類して価値マップを作成して完了
価値カードのフォーマット 価値カードのフォーマット
価値カードのサンプル 価値カードのサンプル

私がデザイナーとして普段何かデザインを発想するときは、ついユーザーのニーズばかり注目してしまいがちなのですが、この手法のように、価値にフォーカスしていくことで違った目線でコンセプトを立てることができるのではないか?と感じました。例えば、先の旅行のサンプルにおいて、「細かい行き先は後で決めたい」というニーズに着目するのと、「観光先でその土地を知る」という価値に着目するのとで、違ったアイデアが浮かんできそうです。直接ニーズから発想しないことで、ニーズを叶える機能の実装ばかりに気を取られず、問題の解決案に柔軟性が持たせられそうです。

この手法は手順が明確で初心者にも比較的入りやすい手法なので、今後色々なところで活用していければと考えています。

KA法の詳しい方法については千葉工業大学の安藤 昌也先生のブログで詳しく紹介されています。

以上で、「人間中心デザインプログラム」の紹介は終わりになります。
人間中心設計に少しでも興味を持っている方の参考になれば幸いです。
私としても、人間中心デザインプログラムで学んだ事を業務に積極的に取り入れて、
よりよいUXを提供できるデザイナーを目指していきたいと思います。

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